移行型任意後見契約の7つのメリットとは?

(1)元気な間は、本人で財産管理できます。

本人で管理できる間は、本人で管理します。
意思ははっきりしているが、移動が不自由な場合や寝たきり状態の場合には、財産管理委任契約に基づいて、頼みたい部分だけ代理人に任せます。包括的に代理権を与えておくことも可能ですが、意思がはっきりしている間は、極力本人で財産管理を行い、頼みたい部分だけ信頼できる代理人に、財産管理を託すよう定めておきます。

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(2)判断能力が低下した場合のみ、任意後見契約がスタートします。

本人の判断応力が低下した後は、家庭裁判所が、代理人等の請求に基づき後見監督人を選任して、代理人を監督することになります。
代理人は、定期的に後見監督人に事務内容を報告する義務が発生します。家庭裁判所が選任する後見監督人には、弁護士・司法書士が選任されるケースが多いです。

(3)元気なときの意思(ライフプラン)を、証拠力の高い公正証書でのこせます。

本人が希望するライフプランを、公正証書で書面化しておくことで、事情を知らない第三者に本人の意思を証明でき、本人の判断能力が低下した後でも、代理人は、本人の意思に沿って実行しやすくなります。 例えば…

  • 高齢者住宅等に入居した後の自宅の処分方針のこと
  • 医療の治療方法や病院の希望、延命治療に関すること
  • 葬儀や納骨、埋葬の希望のこと

作成した文書は、公証役場で原則20年間厳重に保管され、紛失・盗難・偽造を防ぐことができ安心です。又その謄本を代理人がお持ちになることで、元気なときの本人の意思を事情を知らない第三者へ証明できます。

(4)頼んだこと、頼まれたことの証が登記されます。

任意後見契約を締結すると、公証人より東京法務局へ登記の嘱託がなされ、不動産・会社の登記のように登記事項証明書の取得が可能となります。(ただし、請求できる人は限定されます)代理人が、戸籍謄本等取得のための役所での手続き、金融機関での手続きを行う際、この公的証明書類(登記事項証明書)と公正証書謄本があることで、その度ごとの委任状の作成は、原則不要となります。

又、登記事項証明書の代理権の範囲に、財産管理又は処分が含まれている場合には、(任意後見人が代理人として)不動産登記の申請をするに際し、当該不動産が特定されていなくても、登記事項証明書を代理人の権限を証明する書面として、取扱っても差し支えない旨の法務省通達があります。(平成15年2月27日付法務省民二第601号通知)

(5)代理人に遺産分割協議・相続放棄・子の為の法定後見申立ても託せます。

本人が、夫や兄弟の法定相続人になった際、本人に判断能力がない為、遺産分割協議や相続放棄の判断ができない場合に備えて、代理人へ、遺産分割協議や相続放棄手続きの権限を与えておくことも可能です。又、将来の法定後見申立て手続きの権限(例:3年後に成人を迎える知的障害がある子のため)を与えておくことも有効です。備えをしていない場合、家庭裁判所で選任される法定後見人が、遺産分割協議等に参加することになりますが、手続きに時間を要し、相続税の申告が期限内にできず困ることも少なくありません。

(6)本人の為の、迅速な財産処分・資金調達が可能になります。

高額な入院・手術費用や介護施設費用を捻出するため、本人の自宅等の不動産を売却する必要が生じた場合、代理人に権限を与えておけば、迅速な財産処分・資金調達が可能となります。
法定後見人と異なり、任意後見人が代理人として、自宅等の不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可は不要です。(ただし、後見監督人の同意を必要としている場合が多いです。)

(7)「死後の事務委任契約」も、同一公正証書内の別条項に盛り込めます。

本人がお亡くなりになると代理人としての権限が消滅する為、任意後見契約は終了し、代理人で行っていた事務を、相続人へ引き継ぐことになるのが原則です。
しかし、これは反対の特約をしておくことで、本人の死亡によって当該契約を終了させないことができます。(最高裁判例平成4年9月22日)又、本人の地位を承継した相続人が、死後事務委任契約を解約して終了させることも、特段の事情がない限りできないとされています。
本人の意思として、死後の事務手続き(生前の入院費等未払い金や葬儀費用の支払い)まで代理人に託したい場合、「死後の事務委任契約」として同一公正証書内の別条項に盛り込んでおけば、死後の債権債務の清算事務の備えも可能となります。
別途作成する遺言公正証書の内容と矛盾・抵触を避けるために、念のため「遺言公正証書に別段の定めがある場合は、遺言公正証書が優先する」旨を明記しておけばより万全です。

◆委任できる死後の事務の具体的な内容

葬儀の手配・埋葬・官公庁への各種届出・水道光熱費の中止届・生前の入院費等の債務の精算・葬儀関係費用の支払い・部屋の残置物の片付け費用の支払い等 ※これらの費用は、本人の財産から代理人が支弁し精算します。

注)1
本サイトで提案する移行型任意後見契約には、
①財産管理委任契約
②任意後見契約(認知症等により判断能力低下後、発効)
③死後事務委任契約が盛り込まれています。
実務ではこれら①から③の契約を1通の公正証書にまとめて作成することが一般的なことから、別途作成する遺言公正証書と併せて、2つの生前契約としています。
①~③の契約をまとめて表現するときは「移行型任意後見契約」、それぞれの契約を指す場合は「財産管理委任契約」「任意後見契約」「死後事務委任契約」と表現しています。

注)2
以下、本サイトでは、エンディングノートに書いた希望を実現させたい人を「本人」、その実現をサポートする人を「代理人」と表現しています。

※当事務所オリジナル移行型任意後見契約と遺言文例(7パターン)も掲載しています。